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【人事労務担当者向け】2026年4月施行、在職老齢年金の改正について

  • 3月13日
  • 読了時間: 4分

1.はじめに                    


「人生100年時代」といわれる現代では、定年を迎えた後も社会と関わりながら、自分らしく働き続けることが前向きで当たり前の選択肢となりつつあります。


しかし一方で、「働くと年金が減ってしまい、結局損をするのではないか」といった不安を抱く方も少なくありません。


実際には、働きながら年金を受け取る仕組みである「在職老齢年金」は、高齢者から年金を取り上げることを目的とした制度ではありません。


健康で一定以上の収入がある方に、現役世代とともに年金制度を支える役割を担っていただくという、社会全体で支え合う考え方に基づいた仕組みです。


働くことは収入を得るためだけではなく、社会の一員として制度を支えるという意味も持っています。


本記事では、「在職老齢年金」の仕組みや、働きながら年金を受け取る際のポイントについて、分かりやすく解説していきます。


2.在職老齢年金の概要               


在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入して働きながら年金を受給する方について、賃金と年金の合計額が一定の基準を超えた場合に、年金の一部または全部が調整(支給停止)される仕組みです。


この制度で調整の対象となるのは「老齢厚生年金」のみであり、老齢基礎年金は減額されることなく全額支給されます。


また、支給停止額の計算は月額単位で行われ、停止されるのはあくまで年金の支給額です。そのため、給与そのものが減額されることはありません。


3.改正の内容:基準額の引上げ           


今回の改正により、年金が減額(支給停止)されるかどうかの判断基準となる金額(賃金と老齢厚生年金の合計額)が以下の通り変更されます。


 ・2026年3月まで:51万円(月額)

 ・2026年4月から:65万円(月額)


厚生労働省は、今回の見直しの趣旨を「平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の方の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすること」と説明しています。


なお、この「65万円」という基準額は、毎年度の賃金変動に応じて改定される仕組みとなっています


4.具体的な支給額の計算例             


賃金(総報酬月額相当額)が46万円、本来の老齢厚生年金(基本月額)が10万円の場合を例に挙げます。


  1. 改正前(2026年3月まで) 合計額が56万円(46万円+10万円)となり、基準額の51万円を超えます。 計算式:10万円 -(10万円 + 46万円 - 51万円)÷ 2 = 7.5万円 結果、2.5万円分が支給停止となります。


  2. 改正後(2026年4月から)

    合計額が56万円は新基準額の65万円以下となります。

    このため、年金額の調整は行われず、老齢厚生年金は「10万円(全額支給)」となります。

  

 

具体的な支給額の計算例


留意事項

ご自身の年金額の試算については、日本年金機構の「ねんきんネット」を利用することで、さまざまな条件を設定した詳細なシミュレーションが可能です。


ただし、新基準額である65万円を用いた試算ができるようになるのは、令和8年4月以降となります。


制度の詳細や具体的な計算方法については、全国の年金事務所や街角の年金相談センターの窓口、または電話相談窓口でも案内されていますので、必要に応じて活用されるとよいでしょう。


5.まとめ                     


平均寿命や健康寿命が延びる中、働き続けることを希望する高齢者は増えており、人材確保や技能継承の観点からも、高齢者の活躍を求める社会的ニーズは高まっています。


今回の基準額の見直しにより、これまで年金の減額を意識して働き方を控えていた方も、自分らしい働き方を選びやすくなります。その結果、企業にとっても高齢者人材の活用を進めやすくなることが期待されます。


企業としては、制度の内容を正しく理解し、対象となる従業員に対して適切に説明できるよう準備しておくことが重要です。


制度の変化を前向きに捉えることで、「働くか、年金をもらうか」という二者択一ではなく、「働きながら年金も活用し、人生をより豊かにデザインする」という新しいライフスタイルも見えてくるでしょう。






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